ガーデン王国5「アマリアの誕生」
この物語は、ガーデン王国と呼ばれるバーチャル(仮想世界)で起きたフィクション(作り話)を書いている。ガーデン王国には、色々な国王や姫の他に、レオル・ファティルと呼ばれる白い妖精やジョイル・ビルと呼ばれる黒い妖精などもいた。
今日は、ガーデン王国にとって大切な日であった。
9月15日は、アマリアが天上の泉で誕生し、地上に降臨してガーデン王国をつくった記念すべき日であった。人・妖精・動物・植物など、王国で命あるもの全てが、アマリアから生まれたのであった。そして、これら王国全てのものが、アマリアの誕生と降臨に感謝し、別の世界へと旅立っていったアマリアが、幸せの光に包まれ、心安らかにいてくれることを願っていた。
ある年の9月15日、国王は、公務を終えた後、王宮の人々と、アマリアの誕生と降臨を祝う儀式を行う予定であった。しかし、急な用事が入り、他国の王の下へ行かなければならなくなった。
国王は、他国へ赴く前、夕暮れ迫る川沿いの道を馬に乗り、アマリアが祀られていると言われる神殿へと向かった。国王は、その神殿の前までは行ったことはあったが、初めて中に入ってみた。神殿は、外から見るのと、中から見るのとでは、別のものであった。
どんどん中に入って見ると、悲しそうな顔をした小さな像があった。国王は、その像の前で目をつぶり、アマリアの誕生と降臨を祝した祈りをささげていると、いつの間にか像の足下で横たわってしまった。後から思えば、何か不思議で滑稽な姿でもあった。
10分後、国王は目を覚まし、急いで他国の王の所へ向かった。数日後、国王は王宮に戻ると、レオル・ファティルと呼ばれる白い妖精などを引き連れ、あらためてアマリアの誕生と降臨を祝う儀式を行った。その会場は、王国の中で最も人が集まり珍しい乗り物や食べ物もある所で、高い建物の1室で行われた。見晴らしも良く、眼下には、行き交う人々や珍しい乗り物を見ることもできた。
儀式では、泡の出る黒い飲み物と白くて甘い物を参加者で分け合って食べることになっていた。しかし、初めてこの儀式に参加したレオル・ファティルは、白くて甘い食べ物を見ると、飛び跳ねるぐらい大喜びであった。そして、その見たこともない食べ物に呪文を唱え、一瞬にして絵としてしまった。
国王は、その後もレオル・ファティルと色々な所へ行き、色々なものを見てきたが、レオルが一瞬にして絵と化す呪文を唱えるのを見たのは最初で最後であった。国王は、周りの目も気にせず、甘い食べ物を一瞬にして絵に変えてしまったレオルの喜びや姿が、愛おしくてしょうがなかった。
ちょうどその時、数日前にアマリアを祀る神殿で見かけた悲しい顔をした像があらわれ、レオルの姿を見て微笑み、遠くへ消えていった。アマリアにとっても、レオルの予想外の喜びにふれ、きっと心も安らぎ幸せの光に包まれたのであろう。
国王にとって、今日は、アマリアの誕生と降臨を祝うと共に、レオルのそんな姿にふれることの出来た大切な日でもあった。ありがとう。。。。
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